ちょっと不便。…それもいい?

定期点検等でオーナー様宅にお伺いした際には、暮らしてみてどうですか?というお話しをします。

オーナー様のお心遣いもあってか、嬉しいお言葉をいただくことも多いのですが、こうすればよかった、これがちょっと使いにくい、、などのお言葉をいただくこともあります。

後者は設計者として反省すべき点ですので、より良いものを提案できるよう、後の設計に活かしていくのですが、とあるオーナー様がこんなことをおっしゃっておりました。

「どんなにたくさん考えて建てた家でも、住んでみてから気付くことが出てくるのは当たり前。それにどうやって順応して暮らしていくか、それを考えるのが楽しいし、そうやって工夫していくことで自分たちの家・自分たちの暮らしになっていく。」

「モノを自分たちに合わせるのではなく、自分たちがモノに合わせていくということも大切。」

それを聞いて、素敵な方だなぁ、、、と感動してしまったわけですが、設計において大切な考え方であるとも思いました。

よく「家は人生最大の買い物」といいます。
どうせ建てるなら、理想を全部詰め込んだ家にしたいですよね。
私たち設計者も、住まい手の要望を全て叶えたい!そんな気持ちで設計に取り組みます。
また、住まい手により良い暮らしをしていただけるよう、より快適に暮らしていただけるよう、あらゆる場面を想像して、生活しやすいか?不便はないか?を考えます。

ただ、より良い方、より便利な方ばかりを選択していけばコストがかかるのも事実ですし、結果必要なかった、では元も子もありません。

あったらあったで便利だけど、なくてもなんとか生活できる。
そういうものは思い切って”ない方”を選択してみる。

敢えて不便にするというわけでは決してありませんが、便利にしすぎない、備えすぎない、という考え方もあるのかもしれませんね。

モノを人に合わせる。人がモノに合わせる。
どちらが正しいということではなく、幅広く柔軟な考えをもって提案できる設計者でありたいと思います。

藤井南帆