場面(思い出)は、やっぱり多い方が良い

サン工房では「場面」を意識した設計を行っています。「場面」を「思い出」に言い換えるとイメージがしやすいかもしれません。「場面(思い出)」がたくさん残せる家を設計したい、簡単にいうとそういうことです。
住まい手にとって、その家での「思い出」は、かけがえのない宝物です。家を巣立った子供にとっては、その思い出が、その後の人生での心の支えになりますし、子供を送りだした親にとっては、その思い出こそが、自分達が懸命に生きてきた証です。

先日、たまたま見たテレビ番組で、やっぱり「場面(思い出)」は素晴らしいなぁと、再認識させられることがありました。その番組は、「大人になった子供が、親に昔話を聞く」という内容で、50代の男性が、70代の両親に40代の女性が、70代のお父さんにそれぞれ、オイルショックの時の話を、実家の居間のソファーに座って聞いていました。オイルショックは1970年代に起きた世界的な石油不足による社会混乱ですが、当時オイルショックのせいで、今のコロナと同じように、日本でも日常生活にとても大きな変化と混乱があったそうです。
そして、親世代からは、「とにかく良くなると信じて頑張るしかなかった」「大変だったが、時代に合わせた仕事に変えた」「上の世代の先見に助けられた」「自分の事だけじゃなく、他の人のことのも考えないといけない」などの話が具体的な体験談として語られました。それらは、大それた言葉ではないけれど、私には、とてもたくましくて温かい、説得力のある言葉に聞こえました。
そして、それを聞いていた、大人になった子供達もいつもの親を見る甘えと少しの強がりを持つ表情から、話を聞いていくにつれ、いつしか、人生の先輩から、何か大きな学びを得たかのような安心感と尊敬に満ちた、表情に変わっていきました。とても素晴らしい「場面(思い出)」でした。とくに、この場面(思い出)が、幼き頃自分が育った実家であったことが素晴らしい。実家に刻まれた様々な生活の跡や風景が、当時の記憶も呼び起こしてくれ、一段と素直にお互いの気持ちを話せたのでないでしょうか。今後、この「場面(思い出)」が、親にとっても子にとっても一生の宝物になることと思います。

私の親も70代で、オイルショック当時は20代で、結婚をし子供もいた年齢だったと思います。そして私の親もまた、当時、懸命に家族や暮らしを守ったのだと思いますし、だからこそ、今の私がこうしてあるのだと思います。今年の年末年始は、久しぶりに両親に会う予定です。私も、何か、両親の昔話が聞きたくなりました。そして少しでも感謝の気持ちが伝えられたらと思いました。

今年もあと1週間です。皆様、どうぞ良い年末年始をお過ごし下さい。そして令和4年が、皆様にとって良き年になりますことをお祈り申し上げます。

大西 等

スタッフ

前の記事

窓のハナシ
スタッフ

次の記事

木のあたたかさ