説得力とは

先日、お住まいになられて5年目になるお客様から改めて、なぜ弊社にお住まいを依頼していただいたのか?を伺う機会がありました。
その中で、設計の内容に意味がない場所がない、と感じたこと、とお話ししてくださいました。他の言葉でいえば「ぶれない、一貫性があるところです」と。
そこで、具体的にはどこですか?と聞いてみました。
例えば見た目や、その時一時的にやってみたいなと思ったを話した時、それをそのまま聞いて実現しないところ。だそうです。なぜこの高さにこの奥行で棚があるのか、そういった小さなことでもきちんと理由があり、その理由が納得できるものであることが、安心できたそうです。
ただ要望を聞くだけでなく、後々使いにくいもの、生活に支障が出るものはやめたほうが良いと言ってもらったと。見学会で見たどの家も共通して感じたことだそうです。
要望を聞いてその通りに作る方が考える必要もなく、責任も軽くなるかもしれません。しかし、設計は回答をお客様にゆだねるだけではなく、このように生活したら快適だと思いますという最適だという自分なりの答えを出します。そこには常に選択と感覚の相違の間で、いいと思うモノサシを持っていないと答えが出せない部分でもあります。
日頃の生活の中でも、外を歩いていても、自宅でくつろぐ時間も、家のことをしていても、常に考えて、毎日の考える積み重ねがサン工房らしい設計につながっているのだなと感じました。何気ない日常の生活を見つめる、当たり前のことですが、住宅設計の深く面白い部分であり、いつまでもゴールの見えないものでもあります。少しでも意味のある計画、設計を目指し、切磋琢磨したいと思います。

山口江梨子