おくる

すこしまえに”紆余”というタイトルで形にならなかったご提案のお話をしました。
今回は形になったご提案のお話をしたいと思います。

トイレ近くの小さな手洗い。
「手洗いしたら、タオルでなくてペーパータオルで拭きたいんです」
数年前から、こうしたご要望も増えてきました。
せっかくなら、ペーパーのストックも保管できたら便利かな。水が飛び散らないように、紙を取る→拭く→捨てるはなるべく近くで。開口部はあまり”ペーパーのため”といった感が出ないように…。
そんなことを考えながら、ストックの入った引出の前板にペーパー用のスリットを設け、その下に潜ませたゴミ箱スペースを隠す扉を設えました。

「この写真の食器棚、つくれますか?」
インスタグラムで気に入った写真を見せてくださった奥さま。
はいできますと取り掛かりつつ、別の事例のお皿入れをご提案。ご希望の形の中にご提案の形も取り入れて、使い勝手がより良くなるように設えました。

物干しを兼ねる脱衣室。
「上げ下げできる物干にできますか?」
わかりました、と言うには勿体ない杉の天井でしたので、慎重に理由を伺い進めます。
”何も干していないときに、物干しが目立たないようにしたい”というのが真意でしたので、真鍮フック、麻ヒモ、ひのきの棒で、素材に馴染む控えめな物干しをつくりました。

何かをご提案するというのは、だれかにプレゼントを贈るときと似ているなと思います。
言われた通りではただのおつかい、自分本位では好みの押し付けになってしまって喜ばれるとは限りません。
使い勝手を想像し、提案の引出しを増やすべく日々勉強し、相手の真意に耳を傾ける。
大事なことは他にもまだまだあると思いますが、そんなあれこれの先に「数年後も喜んでいただけるように」という想いを一番に置いて、ご提案をしていきたい思っています。

鈴木孝明

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