すみこなす力

先日、お住まいになられて10年、奥山の「薄明りの家」の見学会をさせていただきました。
夏の日差しの中で庭の樹木は、家を隠すように茂り、木陰を作り出しています。


↑10年後庭外観写真

アプローチの小道には葉の影がチラチラと揺れ動き、どこか遠くの国に来たようなそんな気分にさせてくれます。
聞けば、お庭はご家族で少しずつ樹木を増やしながら、ここにこんな仲間を迎えたいねと選んでは植えて来られたそうです。
剪定というより枝を払うような形で手入れされ、樹形も美しく育っていました。

こちらは、新築後間もない写真です。

↑新築時庭写真

庭の変化がよくわかりますよね。
冬に落ちる大量の落ち葉や夏に刈り取った草は樹木の肥料となっているとのこと。
ゴミに出すのではなく、循環しているからこそ、樹木が生き生きとしているのかもしれません。


室内に入ると、住まい手が気持ちに沿うように、家に迎え入れてきた数々のものたちがお出迎えしてくれます。
小物、花瓶、そこに活けた花。器の数々。

ご主人が祖母から受け着いた着物の仕立て台は、
経年変化していく木の室内と馴染んで存在感を放っています。
この場所はお料理教室を奥様がされていることもあり、まるで小旅行のような、普段の生活とは違うひと時過ごし、
心と体によい食事と、適切な灯りと関わりながら、住まい手との会話を通して癒しを感じて帰られるのではないかと思います。
時が経つほどに味わい深く、そして自分らしく。

よい家とは住まい手のすみこなす力と住まい手に合った設計のご提案と
両方あって完成するのだと感じた一日でした。

 

山口江梨子

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だからこそ。