帰る実家

年を重ねる毎に、幼き頃住んでいたトタン屋根と、木とトタン板の組み合わせがアンバランスな外壁の古い平屋を思い出すのは、何故かお盆の頃が多いように思われます。
父が他界し母が他界したあと実家は、解体され目で見ることはできないのですが、夏に母と一緒に縁側で安い氷アイスにコーヒー牛乳をかけて食べた記憶や、寺内貫太郎みたいな父の記憶は、私にとって苦くつらい出来事もありますが、場面を思い出すとそんな光景が良くも悪くも浮かんできます。
若かりし頃は、帰りたくない実家ではありましたが、自分が父や母の年齢に近づくにつれて、そんな記憶さえも全部まとめてみれば、懐かしい実家であり、実家は故郷と思っています。
性能はもちろんのことですが、そんな記憶が残る家づくりをこれからも続けていくことが、家づくりに大切なことと思っています。

2022年夏
松井進