細部

『1級建築士が芥川賞受賞』

とてもセンセーショナルな情報が飛び込んできました。普段から小説はほぼ読まず、さらには純文学、、、、しかし同じく設計者として通らない訳にはいかず本を手にしました。

 
冒頭から度肝を抜かれます。建築用語の連続で表現が細かすぎ、、、私は興奮を憶えました。著者と同じ仕事という事、経験がリンクして、話の幹となるその家に吸い込まれるように読み入りました。

16坪の小さな平屋、籐が巻かれた丸柱、垂木表しの勾配天井、低い天井、シナ合板、無垢材の取手、、良いか悪いか、具体的なイメージ沸いてきます。
 

また、スケッチ、数学、意匠、細部、職人、取手、記憶、、、などなど好きな言葉が何度も出てきて大はまりです。

なぜ自分が住宅の設計をしているのか?言葉や文章で表現する事が苦手で、描く事で伝える事を目指したのか?考えさせられます。

好きな住宅の設計者は例外なく、その方の言葉も好きになります。しゃべるのがうまいではなく、言葉の表現ができる人は設計も上手い。私の中でこれはもう必要条件?

言葉で表現できるという事は、目に見えるモノは勿論、目に見えない事も良く考え、それも細部の視点から始まる。そして、それを設計に落とし込んだ時に、細部まで考える必要が出てきて、完成した物の純度も高いものになる。
 

「何かに目を凝らし、細部に想いをはせたことがあったろうか。」そんな一文が人としても設計者としてもグサッと刺さりました。

細部から考えすぎると良い設計にならないとは良く言われますが、細部から作られるのも事実で、細部が無いと不安な気持ちになるのですが、それも間違っていないように思います。

 
建築文学とも呼べるとても面白い本でしたが、家づくりを考えている方、すでに暮らしている方、地に足をつけて家に住まう事について、また自らの原風景に思いをはせる事になる一冊です。

またこの本に、この家に帰ってこようと思います。
 
岡本