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昨夏、京都へ堀部安嗣さん設計の鈍考にいきました。

喫茶を併設する、事前予約制のこじんまりとした図書館では、6人ほどが携帯電話を手元から離し、本を読んだりぼーっとしたり、思い思いの90分を過ごします。

建物の主であり、ブックディレクターの幅允孝さんが選書した素敵な本棚から、わたしは兼ねてから気になっていた内田百閒のサラサーテの盤を見つけ、意気揚々と椅子に腰掛け本を開きました。

-薄明かりの土間に、死んだ友人の後妻が立っている。夫の遺品を返してほしいと、いつも同じ時刻にそっと訪ねてくるのだ。-

その薄ら寒さに読んだことをすこし後悔しつつ、日常を忘れ、あっという間の90分を美味しい珈琲と一緒に過ごしたのでした。

西に林、東に接道し南北は隣家が連なる静かな住宅街。玄関をあけて視線が伸びる先には、壁いっぱいの窓に青々とした木々の緑がうつります。堀部さんの処女作である南の家にも似た構成です。

小上がりの段差、畳、カウンター、ソファ、デッキの椅子と限られた空間に多くの居場所。深い軒下のデッキに出ると、姿の見えない小川の、その水音だけが耳に届き、竹林寺納骨堂が頭に浮かびました。

黒く塗られた軒裏は深い影をつくり、その先の景色を一層に印象強くしています。設計にあたり、深い暗がりをもつ近所の蓮華寺を、堀部さんと幅さんとで散歩しながらお話しされたとか。ここに来られる方々には、鈍考と一緒にぜひとも蓮華寺にも足を運んで、募っていらした屋根の改修費用を納めて頂きたいと思います。

そうして細部まで丁寧に整えられた空間は、まるで自然にそこに出来上がったような、一本の木のような機能美を感じさせます。

そんな機能をしっかりと堪能すべくプリンも頼んで待っていると、秀麗な奥様がルイボスティーをサービスしてくださいました。美味。

ぜひまた、伺いたいと思います。
ごちそうさまでした。

鈴木

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