見せるところと見せないところ

木造建築の構造架構におきましては、古来より様々な継ぎ手(つぎて)と呼ばれる木材同士を連結させる技法が継承されてきましたが、時代と共にその存在と価値観は希薄となってきて、今の住宅業界では忘れ去られていく技法がたくさんあります。
昔の大工職にしてみたら『そもそも継ぎ手は見せるものではなく、構造的に仕方なく見えてしまった』というように認識もされています。
しかし時代や考え方も変化しており、見方によっては大変美しい加工であり、構造的にも理に適っており、意匠的にもとても魅力を感じます。だれだって魅力ある美しいものは見せたくなるものです。
しかし強度の面からしたら現代のボルトの方がはるかに強いというのも現実であります。どんな世界にも見せたいところと見せたくないところがあると思いますが、構造物で考えた場合ただ単に見た目だけにとらわれず、強度と意匠性を兼ね合わせた建物を造りたいなといつも思っています。
ものづくりの世界におきましては、少しでも綺麗なものを提供したいと思う方々はたくさんいます。またほんの少しの工夫でより良く見えるのであれば、やはりそこには手を加えてみたいという心持ちにもなります。
”見えるところと見えないところ”
”見せるところと見せないところ”
”見せたいところと見せたくないところ”
言い回しにより若干ニュアンスは異なりますが、その先にはきっとお客様に喜んでいただけるであろうという気持ちが前提であることが大事です。特別感や所有感も抱いていただけるようであれば尚嬉しいことであります。

ちなみに画像の継ぎ手は”竿車知継ぎ”(さおしゃちつぎ)と呼ばれる伝統技法の呼称です。大工職に頼んで作ってもらいました。口ではなんだかんだ言っておりましたが、当の本人はまんざらでもなさそうでしたよ。心と丹精の込もった素敵な加工に感謝です。

金原陽一