ふたりの鬼
赤鬼:『これまでにない新しい形を試みたい、要望を超えるカッコいい住まいにしたい!』
青鬼:『合理性こそ正義、無理をせずに住まいの機能、要望と予算に従うべき…』
赤鬼は自己主張が強く、気張っている自分
青鬼は控えめで、禁欲的な自分
赤鬼も青鬼も自分の中に共存するふたりの鬼
建築家、内藤廣さんの『赤鬼と青鬼の場外乱闘』という名の展示会に行きました。
ご自身の建築に込めた想いや葛藤を、赤鬼と青鬼に扮して赤裸々に告白する、きわめてユニークな展示会で、冒頭はそれを真似てみたものです。
わたしもお客様から頂いたご要望から住まいのご提案に至るまで、冷静な自分と情熱的な自分と常に葛藤しています。
ひとつにまとまらなければ、冷静な提案と情熱的な提案と両方をご提案する事もあります。
双方に上手く折り合いをつけて、両立した提案をするのが優秀な設計者であり、私もそこを目指さなければ!とずっと気張っておりました。
しかし、この赤鬼と青鬼の対話による告白は、数々の実績ある建築家でさえも多くの矛盾、恥、失敗を繰り返し、実現しなかった多くの設計案もあり、その上で建築をつくり続けていることを知りました。
また、別の展示会では約40年間、紙の手帳に描き溜めてきた膨大な量の手書きの建築スケッチを見ることができ、その継続性から覚悟すら感じさせない情熱は半端なく、著名な建築家の華やかに見える舞台裏で、長い年月の積重ねでしか到達することのできない境地を見て、ここまでやるのか、と圧倒されました。
(手書きのスケッチをなぜ描くのか?は、また別の機会にて)
建築の展示会はシュッとしててカッコよいものが多いですが、このような『読ませる展示会』で、本人の心の内まですべてをさらけ出したユニークで惹きつけられるものは他にないのではないかと思います。
内藤廣さんは現在75歳。近年でも渋谷駅周辺の再開発に携わっており、未だ現役。パワーを頂きました。
建築に限らず、様々な職業や日々の暮らしの中で、皆さんにも赤鬼と青鬼が登場する場面が多くあると思います。
わたしも赤鬼と青鬼と仲良く付き合っていきながら、日々の設計に取り組んでいきたいと思います。
岡本
最後に氏の言葉より
『創造物としての建築は、みなさんが思い描いているより、もっと複雑で、もっと豊かで、もっと大きなものです。』