設計は手段のひとつ

「家を建てようと思う、そのきっかけは何でしょうか。」家づくりを始める前に皆様にお聞きする最初のご質問です。

お子様のご出産や小学校入学を機に、建物の老朽化を機に、住宅ローンの金利が低い内に、、、など必然性に迫られた理由をお聞きする事が多いのですが、それはきっかけのひとつに過ぎず、掘り下げて考えてみると深いところにもその想いがありそうです。

先日、サン工房へお越しくださったお客様にも同様のご質問をしたのですが、最初は「なぜだろう・・・」とお考えくださったのですが、しばらくしてお答えくださいました。

「自分、家族のための居場所や、これから記憶を刻んでいく場所をつくりたいからだと思う。」

文字にしてみるとストレートで、当たり前の事、または抽象的にも思えますが、表面的な理由だけでないヒトの本能に迫る重みのある言葉に感じました。

居場所づくりが先にあり、そのための安全・安心(構造、防犯)、快適(温熱性能・家事動線)などが条件となり後からついてきます。

間取りを考えていると、どうしてもテクニカルな事ばかりが先にきて頭をいっぱいにしますが、一度立ち止まって、「そもそもなぜお客様は家を建てようとお考えになったのだろう。」と考えてみます。

お客様の顔を思い出し、各々のご家族への想いを考えてみたり、実際にこの間取り、空間でどのように暮らすのかその場面を想像してみたり、お客様の立場に一歩近づいて考える事ができような気がします。

そしてそれを形にし実現するための「設計」のスキルはとても重要なのですが、あくまで「手段」のひとつではないかと感じます。設計のしごとを長年していると手癖のように手段に走ってしまいがちですが、気を付けなければいけません。

それこそ一定の条件を与えれば、希望の間取りができる高性能なAIができるのも想像に易いのですが、皆様の家づくりへの想いや場面を感じとり形にする事は難しいのではないでしょうか。

「想い」が先にあり、それを形にするための「手段」が後にくる。耳障りの良い文言で、言うは簡単ですが、慣れてきた時にこそ思い出さなければなりません。

お客様よりお答え頂いたその言葉に、住まいは帰る所であり、場面ができる所であり、その本質を改めて考えさせて頂きました。

岡本

【参考ブログ】

「紙から始める設計」
「間取りはできてしまう」
「場面はやっぱり多い方が良い」

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