現場ブログ

浴室改修工事 07【リノベーション・躯体補強 計画編】

築年数、約26年目を迎えるお住まいの浴室改修工事です。

土間コンクリートの打設も完了し、これから躯体の補強工事に移る段階となりました。

とは申しましても、いきなり補強工事に着手できるわけではありません。

当然ですが、どのように補強するか施工計画が必須となります。

計画にあたっては、“考査”と“方法”の両面からアプローチしていくことが大切です。

“考査”をするにあたっては、基本と基礎知識が重要です。

併せて可能な施工方法や補強金具などの知識も必要ですね。

“方法”を考えるにあたっては、構造の力学的な見解や、補強材選択の知識、また補強全般における基本的な考え方や作業手順などの知識も必要です。

この補強計画を現実のものにするべく、先ずは現在の躯体状況をしっかりと把握することから始めます。

 

それでは、これを図に起こしてみましょう。

先ずはA面の図をご覧ください。

向かって右側の柱が通し柱となります。【 ➀ 】

この通し柱に向かって、右側の筋交い(斜めの部材)の上端部が梁と柱に刺さるような形になっていますが、ここは胴差しホゾ(どうさし)となっており、通し柱の仕口においてはこの部分がウィークポイントの一つとなります。【 ② 】

この考え方から、できることであれば反対方向になるように、筋交いを入れ直してあげた方がより望ましい形になるかと思われます。【 ③ 】

プラス、構造用合板も併用して、当初の耐震設計状態に復元していきます。

図の左上には胴差し(≒梁)の継ぎ手がありますので、ここも補強金具を追加したいところです。【 ④ 】

共通して言えることは、躯体部分の下端部が全体的に損傷が激しいので、交換できる部材は交換し、できない部分については部分交換の方法を取ります。

また、耐力壁(筋交いや合板など)を施工することで、各仕口に応力が伝達されますので、適材適所に沿った補強金具を使用していくことも大切です。【 ⑤ 】

 

A面の補強計画については以下のような計画としました。

画像と補強計画イメージを見比べてみてください。

なんとなく想像ができますでしょうか。

上部が写っておらずすみません。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

次にB面の図をご覧ください。

この面は、反対側の面が屋内面となっておりますので、うかつに解体ができません。

残さなければならない、反対側の壁を壊しかねません。

また、真壁といって柱が見える意匠となっているので、柱のキワや間柱のキワには、それ用の下地が入っていました。【 ⑥ 】

もともと筋交いが入っておりましたが、下部が劣化損傷で破損しているので耐力壁の用途が機能していない状態です。

だからといって、反対面の壁を傷めずに、この筋交いを撤去することは物理的に不可能な為、この面においては耐力壁合板で補強し直すように判断しました。【 ⑦ 】

現筋交いが浴室側に配置されていたのと、付属の下地材が施されていたこともあり、逆方向で入れ直すことが出来ないのも判断結果の一つです。

Aの面と共通して言えることは、躯体部分の下端部が全体的に損傷が激しいので、交換できる部材は交換し、できない部分については部分交換の方法を取ります。

ただし、Aの面に比べると交換と撤去が複雑で困難な為、この面は新しい材を足していく方法で考えました。

補強金具に関しては同じ考え方で、各仕口に応力が伝達されますので、適材適所に沿った補強金具を使用していくことは同条件となります【 ⑧ 】

 

B面の補強計画については以下のような計画としました。

画像と補強計画イメージを見比べてみてください。

斜めで少しわかりづらいですね。

こちらもなんとなく想像ができますでしょうか。

Aの面と比較すると、こちらの方が少々複雑ですね。

ここも上部が写っていませんね。

写真の撮り方が下手でお恥ずかしいです。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

最後にC面の図をご覧ください。

この面については窓がありますので、耐力壁は配置されておらず、直接的な躯体補強という点は存在しません。【 ⑨ 】

ただしもともとの間柱が真壁形式となっておりましたので、大壁とするべく間柱を抱かせて取り付ける方法を選択しました。【 ⑩ 】

かつ、A面とB面とも共通する工事として、各面の柱の下端部が損傷しているので、A面、B面、C面とも、建物の鉛直荷重を支えるように新規で柱材を入れ直しています。【 ⑪ 】

以前、解体の時に説明を加えさせてもらっていますが、柱の引き抜きを防ぐ為のホールダウン金物が用をなしていないのを覚えていらっしゃいますか?

ここは絶対的に復元したいところです。絶対です。

絶対に復元しなければなりません。

でも座付きアンカーは使用できません。

したがって、基礎に直接アンカーボルトを打ち込むようにし、ホールダウンの機能を復元するよう計画しました。【 ⑫ 】

通常のアンカーボルトはM12といって、直径約12㎜のボルトとなりますが、ホールダウンアンカーにつきましては、M16の直径約16㎜のボルトとなりますので、材選択においてその点の注意は必要ですね。

もう一つの注意点としては、柱のすぐ真横にはアンカーの打ち込みができないので、ホールダウンアンカーの補助金具の使用も検討する必要があります。【 ⑬ 】

『そんなの出来るよ。』

・・という声もあるかと思いますが、例えできたとしてもアンカーの打ち込み角度が斜めになってしまいます。

私、あまりこれ好きではないんですね。。。

見た目にも悪いですし、斜めに打ち込んだものを垂直に戻す必要が生まれますので、不要な応力をボルトに負荷させなければなりません。

物理的にいたしかたなければ、そのような方法も取らざるを得ませんが、他にできる方法があるのであれば、可能な限りベターな方法を選択したいところであります。

したがって、⑫のアンカーと⑬の補助金具はセットでの使用となります。

A面、B面とも共通して言えることは、躯体部分の下端部の損傷が全体的に激しいので、交換できる部材は交換し、できない部分については部分交換の方法を取ります。

補強金具に関しては同じ考え方で、適材適所に沿った補強金具を使用していくことは同条件となります【 ⑭ 】

 

C面の補強計画については以下のような計画としました。

画像と補強計画イメージを見比べてみてください。

こちらも斜めで少しわかりづらいですね。

A面、B面と比べると、複雑さは軽減されていますね。

 

さすがに全部の説明ができず心苦しいですが、少しでも内容が伝われば嬉しいです。

 

◇先ずは現況をしっかりと把握すること。

◇計画という点について、多角面的な思考で取り組むこと。

◇施工方法や手順を考えて、無理な補強にならないよう考査すること。

◇構造の力学的な見解や、素直な応力の伝達方法を見抜くこと。

◇補強における材の大きさや樹種など、材の選択を見誤らないこと。

◇昨今では優れた補強金具がたくさんあるので、そちらを上手に選択すること。

 

補強計画にあたっては、上記のようなことが大切なのではないかと考えます。

これは耐震補強の考え方と補強計画にも通じますので、とても重要なこととなります。

 

現況確認→考査→施工計画・・・

現況確認→考査→施工計画・・・

現況確認→考査→施工計画・・・確定!

確定に至るまで、これを2、3回は繰り返しますかね。

中には特殊な金具を使用することもアリかもしれませんが、工事にはコストというものがあります。

当然そのコストは、依頼主であるお客様が負担するものとなります。

そのような金物も、構造的に絶対的に必要なものであれば使用せざるを得ませんが、しっかりとした考えで補強計画を企て、その中で可能な限りコストを抑えつつも、的確で安心できる躯体補強を行うことが、建築従事者の責務の一つではないかと思っております。

それと、補強計画とは応用の連続です。

応用ができるようになるには、絶対的な基本と基礎知識が必要です。

基本ができていなければ、応用はできません。

応用だけ覚えてしまっては、何が基本なのかがわかりません。

基本と基礎知識は、何においてもとても大切なことだと思います。

 

次は躯体補強の施工に移っていきますよ。

 

現場監理 金原