ススキの穂が風に揺れる様子や、風がはこぶ金木犀の香り。
足元で音を立てる落ち葉に少しずつ早くなる日没。
外を歩いていると秋の深まりを感じますね。
みなさんは何気ない風景に、懐かしさや、どこか寂しいような気持ちを覚えることはないでしょうか。
日本には、古くから季節の移ろいや、時とともに変化していくものの姿に美しさを見いだす感性があります。
その感性を語る言葉のひとつに、 「わびさび」 があります。
わびさびとは、華やかさや完全さだけを美しいとするのではなく、簡素なものや、時を経て味わいを増したもの、不完全なものの中にも美しさを見いだす考え方です。
たとえば、長い年月を経て色合いが深まった木材。
雨風にさらされ、少しずつ表情を変えていく石や土。
使い込まれた道具に生まれる艶や、自然素材ならではの色むら。
新品のときの美しさとは違う、時間を重ねたからこそ生まれる魅力があります。
お寺の改修工事などできれいに塗装された様子を見て、以前の方が趣があったのにと感じる人がいるのも
私たちに根付いているわびさびの精神からくるのかもしれません。
建築においても、大きな窓で広い庭と立派な芝生という魅力もあるかもしれませんが
障子を通した庭の枝葉の影の方に心惹かれたり、たっぷりとした壁のなかに差す一筋の光のような
小窓に心が救われるような瞬間もあるのではないでしょうか。
こうした心のゆらぎに沿う、様々な場面がある住まいで、自分と静かに向き合う時間もまた
日本らしい住まいのあり方なのかもしれません。
和風という言葉ではくくることができない、そこは精神的な心の動く瞬間をどう作るかということなのでは、と建築を通して感じています。
今日も鈴虫の声を聞きながら夜が更けていくのを愉しみます。

山口