光の重心

「かつて日本家屋も、昼は障子を透過した横からの拡散光、夜は座の高さの行灯からの拡散光であったように、横や下からの光は、あかり文化の中で培われてきたのであるが、天井の引掛けシーリングのせいでいつの間にかなくなってしまった。」
弊社アトリエの、小さな地窓だけが付いた納戸が好きなのですが、ここに入ると宮脇壇さんの著書「目を養い手を練れ」の、この一節を思い出します。
地窓から床を這うような光で照らされる室内には不思議な明暗があり、お客様をご案内するとお子様も大人の方も面白がってくださいます。
納戸の暗がりが、差し込む光をより際立たせているようで、つい置いてある椅子に座ってみたくなる魅力があります。
窓や照明を考えるときには、作業性や視認性はもとよりどのような光がくつろぎある空間に感じられるかを大切にして考えていきたいと思います。

鈴木孝明