海の博物館(内藤廣氏)







昨年末に三重県鳥羽市にあります「海の博物館」へ行ってきました。
5年前から伊勢神宮へお参りしておりまして、
その時からぜひ訪れてみたいと思っておりましたが、
閉館している日と重なり訪問が叶わずおりました。
展示物とそれを包む建築を見ていると、地元の漁業に密着し
目的や要望に応じて多様な設計をされることに驚きました。
設計者である内藤廣さんの言葉に「素形」というものがありますが、
さまざまな思考を束ねたところに現れる、裸の思考というか、
そういうものが「素」だと。
その土地の気候風土に耐えられるこの海の博物館建築にあたり、
当時坪40万~50万程度で建築するというコストの厳しさ、
塩害に対し長く耐えらえる素材の剪定、
収蔵品の保存のため設備に頼らない調湿作用を発揮するたたき土間など、
膨大な資料を集め模索し、決定しながら設計していったことを想像し、
その試行錯誤の中に生まれたありのままの設計、
姿が海の博物館なのかもしれません。
完成までに7年半を要し1971年開園され、今後もさらに長い月日、
展示物を守り続けてくれる入れ物となっていくことと思います。
展示物は海と共に生きる、漁師や海女さんの道具やその生活、
海を守るための活動、多くの木造船などが保管され、手作りの展示品も多く、
地元に愛されている場所であることが伝わってきます。
ご興味のある方はぜひ、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

山口江梨子