設計の見えにくい仕事

設計の仕事、と聞くとプランを書いている人というイメージを持つ方もいらっしゃると思います。                          確かにプランニングもしますが、設計を書く前にすべきことは実はかなり多く、思いのほか解決まで時間を要すこともあります。例えば、土地の条件として、道路に対して土地が上がっている、下がっている、土地が斜めになっている、樹木が生えている、建物が建っているなどがあります。
11/22(日)に見学会をさせていただく、「古馳の家」では、計画地に初めてお邪魔した際、西隣地の樹木は16mを超えているものもあり、一部の樹木はご実家の屋根上まで枝葉が伸びて、台風の際にご両親は家に被害が出るのでは?と不安を持っていました。

もちろん高木ですから、建物に影がかかり、「寒く昼間でも暗いので西側の部屋にはあまり行かないんです。」と。南には祖父母の代から蜜柑畑をしており、地面の高さもまちまちで、水がたまったり、日が当たらないせいか木も病気になったり痛んだりしていました。
数十年後に将来土地を継承するお子さんたち家族に、整備した土地として管理しやすくしておきたおという想い。そんなご両親の想いも伺いながら、一つ一つ解決にむけて進めてきました。そこに造成をしていただく業者さん、また排水関係に関わる水道業者さん、西隣地の方との樹木伐採の許可をいただけるかの話し合い、レッカーを使った樹木の伐根などなどを経てやっと建物が安心して建てられるようになるまで気づけば1年が経っていました。       住まいが完成した今では日当たりもよく、当時の様子を忘れてしまいそうですが、住まい手のご家族含め、多くの方の協力があり、たどり着いたことを思い大変感慨深く感謝の気持ちと、ご要望に応えられた安堵感があります。   なによりご両親が二世帯を建てるにあたり、一緒に住まう息子さんご家族に気持ちよく住んで欲しいとの想いが原動力になっていたと思います。
設計の見えにくい仕事ではありますが、将来にわたって住みやすい場を整えることも、設計の重要な役割です。

山口江梨子

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