要望通りが正解?

少し前のことですが、久しぶりに会う友人と食事をした時のこと。

「実はいま、家を建てる計画をしてるんだよね」

そんな話が始まり、友人が間取り図を見せてくれました。

「ほぼこれで決まりなんだけど、ここをこうしようか迷ってて…。設計士として率直な意見を聞かせてほしい!」と。

そして、話を聞いているうちに、友人がこんなことを言ったのです。

「打ち合わせで要望を伝えると、その通りに修正してくれる。それはもちろん嬉しいんだけど…何も知らない私たちが好き勝手言ったことを、全部そのまま聞いてもらって大丈夫なのかなって不安になる時があるんだよね。」

「良くないことは、良くないって言ってほしい。」

その言葉に、私はとても考えさせられました。

私自身も、設計をする時にはできるだけお施主様の要望を叶えたいと思っています。
家づくりは一生に何度も経験するものではありませんし、だからこそ、「こうしたい」という気持ちは、できる限り大切にしたいです。

しかし同時に、
全てをそのままかたちにすることが、必ずしも良い設計ではないとも感じています。

例えば、少し視点を変えるだけで、空間はもっと広く感じられるかもしれない。

動線を少し整理するだけで、暮らしやすさが大きく変わるかもしれない。

今の希望を優先するより、10年後、20年後も心地よく暮らせる選択があるかもしれない。

家づくりは、単に要望を図面に落とし込む作業ではなく、”本当に心地よい暮らしとは何か”を一緒に考えていく時間なのだと思います。

だからこそ、人と人が対面で打ち合わせを重ねる意味があり、私たち設計士が存在する意味がある。
要望を否定するためではなく、その奥にある“本当に求めているもの”を一緒に探すために。

そんなことを、改めて考えた出来事でした。

藤井